●暗澹たる未来~私向きの老人介護施設 |
4月に私は60歳になった。
ご自身の原爆被爆体験をもとにして、凄まじいまでにシリアスでありながら
独特の詩情を醸し出す小説を書かれている
林京子さんという作家に、先月ネットで他の本を検索していて偶然出会った。
林さんの「曇り日の行進」という作品で、
“兄の骨も六〇歳のおじいさんの骨だって~中略~
軽石のごと水気も脂気もなか、六〇歳の老人の骨に変えられたとさ”という一文を
読み、
「そうかあ、60歳って、やっぱ老人なのか~~」と、しみじみ感じた。
一度見ただけのテレビCMなので詳細は覚えてないが、
「月3900円で、週二回、みんなで歌って踊れる」カルチャースクールみたいなのが
あるらしい。多分、私には向かないと思う。
以前、自分が老人介護施設にはいった時の空想を、このブログに書いたことがあったが、
今や、それは近い未来なのである。
国民年金の掛け金も今年から無くなるし、歯科医師年金基金も5月頭の引き落としで
終わりだ。どこかのスーパーマーケットでは、60歳以上はシルバーカードみたいのを
もらえるらしく、そうすると全商品5%オフになるとのこと。
訪問診療で老人施設に行くことがあるが、そこではおやつの時間のあと、
「春の小川」とか「ふるさと」とかを 高齢者みんなで歌う。
同行した歯科医から「清水先生。我々だったら、なんの歌を歌うんですかね」と
訊かれたことがきっかけで、私の空想癖が始まってしまった。
Sザン「いとしのエリー」、N渕「とんぼ」、シャブ&アスカ「YHA YHA YHA」
(「ビートルズがやってくるヤーヤーヤー」だったら歓迎だが)、ゆず「虎の穴への架け橋」、、、、
といった曲を歌わないといけないとなれば、
いやあ、これは屈辱ですぜ。っていうか、歌詞知らねえし。
「あ、清水オジイちゃんは、ロックが好きだったよね。じゃあー、鼻’図のウルトラ・ソウルやろうか」
という流れ、まったくもって有り難迷惑。
「じゃあ、こうしたらどう?」とメイプル超合金の安藤なつみたいな婆さんが提案する。
その提案とはこうだ。
「ウルトラソウル!というところで右手の拳を思いっきり突き上げるの」という
しょうもない提案。
「そんなことできるかい」と私は小さくつぶやくが、
別の“学級委員だから頭いいのかと思ったが、実は勉強できず、
でも元気だけはある”女(の成れの果ての老婆)が
「それいいね!斬新だよ~!私、大賛成!みんな、やろう!」と追従する。
そのあとは、鼻’図の曲を大合唱し、俺を除く全員が拳を突き上げる。
それで、俺が拳を突き上げてないことを見つけた介護士から、
「清水さん、お高くとまってないで、やろうね」なんて言われたりして。
ああ、やだやだ。
そういえば昔、勤務医をしていた大所帯の歯科医院の忘年会で歯科技工士に
「ねえ、清水先生も、いっしょにチャコの海岸物語、歌おうよ」と誘われ、
それを断った時に「お高くとまりやがって」と言われたことがあった。
ああ、やだやだ。
夜、就寝時間が近づいてきたら、私を“お高くとまっている”と批判した
介護士が私の部屋にやってきて、
イライラした調子で「さ、シミズさん、もう寝な」と私が読んでいた
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を取り上げて床に投げ捨てた。
「おい、何するんだ!」
「もう就寝時間なんだよ!まったく協調性の無いジジーだ。
なんだ、こんな本読みやがって。読むんだったら、ヤングジャンプとか
週刊漫画ゴラクとかにしろ!」と私の頭を小突く。
ああ、やだやだ。
こんな空想やめよう。
ところが、一度始まってしまった空想は終われない。
どんな介護施設が自分に向いているのか、、、
難波弘之さんが入っている老人施設を紹介してもらうってのはどうだろう。
でもなあ、他に村上ポン太さんとか、山下達郎さんとか、すげえミュージシャンばかり
だったら、俺程度のギタリストはバカにされるかもなあ。
あ、そうだ、早稲田大学のプログレサークル“イオロス”の創始者である音楽ライターの坂本理さんが
入っているプログレ系老人介護施設だったら良いんじゃないか?
おやつのあとには、坂本さんが中心になって編集し、俺も文章を書いた本
「200CDプログレッシヴロック」の朗読会、、、、、でもなあ、
なんか議論ふっかけられて気の休む暇がないかも、それもしんどいしなあ。
閑話休題
今、KENSOは確実に11月12日へ向けてスタートしています。
秋からのメンバーのスケジュールをチェックし、レンタルスタジオを予約するという
35年くらい前からライブの度にやってきたことも再開しました。
セットリストを考え、当日に初演する新曲の譜面を書き(これが大変!)、
「全ライブDVD計画」を粛々と進行させる。
大変だけど(特に60歳の私には少しシンドイ)でも楽しい。
皆様、期待していてくださいね!!