2014年 09月 12日
●若者よ、本物に触れよ |
今回は、主として若者に向けて書く。
8月17日のライブ、ほぼ満席のチッタ会場には、少なからぬ数の若者も居たと
スタッフや友人から知らされたから。
「結成40th記念本」の中でも触れたが、齋藤学氏の著書「なぜ日本人は学ばなくなったか」に、“世界には素晴らしい音楽がたくさんある。でも、それが若い人にさほど影響を及ぼさなくなっている。「ガンダム」がその若者の思想のすべてになっているのと同じように、J-popこそが音楽のすべてと割り切っている”というようなことが書いてある。つまり、世界を見渡せば、優れた音楽がたくさんあるのに、何となく今の自分の気持ちを大便、いや、代弁してくれているような気になる歌詞(あくまで歌詞ね)のJ-POPしか聞かない、、、。
まあ、それならそれでよい。私は学校の先生じゃないから、そんな子にまで、
優れた音楽や芸術や文学を紹介してゆく時間もエネルギーもない。
でも、せめてKENSOに興味を持ってくれた若者には、ぜひぜひ、本物に
触れてもらいたいと思うのだ。
以前友人が、
「これがいま支持を得ているゲーム音楽だよ。結構、プログレっぽいと
思うから、清水サンも聴いてみて」と、ゲーム音楽のCDRだったか
MD(もはや死んだメディア?)だったかをくれた。聴いてみた。
優れたロック、クラシック、民族音楽で育った私には、それは単なる商業音楽にしか聞こえなかった。商業音楽でないゲーム音楽などというものがあるのかどうかは別として。
「こんなものが支持されているのか?」と嘆息したことを
覚えている。もちろん優れたゲーム音楽もあるのかもしれないが
(G.Gのケリー・ミネアが作ったゲーム音楽なんてなかなか面白かったし)
少なくとも私が聴いた女性ボーカル入りの“日本製”は楽曲も演奏も歌唱も陳腐であった。
多感な思春期から素人騙しのゲーム音楽や三流アニメの音楽だけを聞いていては、
どんな素晴らしい音楽、天才がそれこそ身の危険を感じながら、あるいは
命を燃やしながら作った音楽でさえ、そうしたゲーム音楽やアニメの音楽のなかで培われてしまった貧弱なボキャブラリーでしか語れないし、その本質の片鱗を感じ取ることすらも難しいかもしれない。
ペヤングのカップ焼きそば(私はどちらかと言えば、日清UFO派だが)に
入っている乾燥野菜しか食べたことがない人が~つまり、あの乾燥野菜で
味覚受容器からニューロン&シナプスを経て大脳皮質・味覚中枢に至るネットワークが形成されてしまった人が~野菜本来の美味しさを大切にした、
例えば京都懐石料理を充分に味わうことができるのだろうか?
光田くんが、ファンクラブの会報で、「これは芸術なのか商業音楽なのか」
といったことを書いていたが、峻別力や洞察力は、
本物を自分の足で探し(当然、お金と時間がかかる)、徹底的にその対象に
対峙するところからしか生まれないのではないか。
先日のライブ終了後のバックステージで、私は四半世紀ぶりくらいに母校の歯科大軽音楽部の後輩の井上くんに再会した。彼は、実はKENSO 1stにコーラスで参加しているし、裏ジャケにも写っている。また「A boy in solitude」収録の「若き日の私へ」の原曲ではギターを弾いている。
彼のお父様は、彫刻家の故・井上武吉さん。
あの「箱根彫刻の森美術館」を作られた偉大な芸術家だ。
日本のみならず、海外の街角にもお父様の彫刻は屹立している。
(ぜひ、まずは図書館などで写真を見てみてほしい。そして現地へ赴き、
実物を見てほしい。プログレである!)
二年前くらいだったか、井上くんがお父様の作品(彫刻や建築)を紹介した
立派な写真集上下巻を送ってくれたのをきっかけに、度々連絡をとるようになった。
彼との会話が心地良いのは、彼が“芸術”について実によく分かっているからだと思う。
想像するに、偉大な芸術家の息子であったことはしんどいことでもあっただろうが、お父様を間近で見ていて“芸術ってこういうものなのだ”といういうことを
肌で感じたことで、彼の中にしっかりとした芸術観が形成されたのだろう。
「内ナル声二回帰セヨ」を含むKENSOの作品についても、「40TH記念本」の
私の文章についても、他の人に言われたことのない個性的な感想を述べてくれた。
私が20代の頃に作ったメロディを使った「若き日の私へ」や「新宿厚生年金に
空」については、例えばマグリットやデルボーの絵画の中に繰り返し現れるモチーフとの関連をキーワードに会話がはずんだ。
私は自分を芸術家だなんて、これっぽっちも思っていないが、
最近のKENSOの作品に対する批判的な意見を見聞きして、
「どうして、これがわからないのかなあ?」と残念に思うことは
少なからずある。
好き嫌いは、もちろんあってよい。
「KENSO SECOND」が最高、「夢の丘」が頂点、そう感じて勿論良い。
どちらも私達の作品だ。
でも、「どうして、これがわからないのかなあ?」という思いは
拭い切れない。
まあでも、もう既に感性が形成されてしまっている大人はしかたない。
しかし、これからの君には、ぜひ、本物に多く触れてほしいと思うのだ。
それは、君自身のためなのだから。
歯科医師年金をもらうのは60歳からにするか65歳からにするか、などといった
ことも考えている私の今のヘビーローテションは、
シューマンの某歌曲。
半田さんに「レパートリーのひとつでもある曲」だと伺い、聴いてみることにした。
ソプラノのLucia Poppとメゾ・ソプラノのAnne Sofie von Otterの
二人のバージョンを聴き比べながら、今まであまり触れてこなかった
声楽という世界の素晴らしさに感動している。
今日は、プーランク作曲の「グロリア」という曲の存在を教えていただき、
早速CDを注文した。
こうした私のモチベーションの根底にあるのは、言うまでも無く
「KENSOと半田美和子コラボレーション・第二幕」すなわち、
「待ってろよ!半田美和子(敬称略)!」という気持ちだ。
半田さんのパソコンには、「清水さんにお勧めする曲」というのが
リストアップされているらしい。
もう、嬉しい事言ってくれるわね、美和子さんたらア。
海外から「内ナル声二回帰セヨ」の感想が多く届いている今、
「KENSO AT LAST」へ向けて、私の心は既に離陸している。
追記・来年2月に開かれる半田さんが参加されるコンサート、
このリゲティ、きっと凄いことになりますよ。
半田さんのソロアルバムにも収録されていたあの現代曲を、
オーケストラと共演するのだ。
(もともとはオケ曲だったと伺ったような記憶がある)
あたしゃ、早速チケットを購入したわよ。
懐メロのロックコンサートを否定はしないが、クリエイターを目指す君、
自分の人生で何かを成し遂げたい君は、このコンサートに行くべきだ。
“本物”には、今すぐに分からなくても、自分が何かに真摯に継続的に取り組んでいれば、いつの日か必ず“分かった!”という瞬間が来ると思うし、その時に既に
“本物”は君の血となり肉となっているだろう。
■神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 音楽堂シリーズ第3回
2015.02.14(土)15:00-
会場: 神奈川県立音楽堂
指揮: 川瀬賢太郎 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
半田美和子(ソプラノ) 門脇大樹(首席チェロ奏者)
リゲティ/ミステリー・オブ・マカブル
ハイドン/チェロ協奏曲第1番ハ長調Hob.VIIb:1
ハイドン/交響曲第60番ハ長調Hob.I:60「うかつ者」
http://www.kanaphil.or.jp/Concert/concert_detail.php?id=258
8月17日のライブ、ほぼ満席のチッタ会場には、少なからぬ数の若者も居たと
スタッフや友人から知らされたから。
「結成40th記念本」の中でも触れたが、齋藤学氏の著書「なぜ日本人は学ばなくなったか」に、“世界には素晴らしい音楽がたくさんある。でも、それが若い人にさほど影響を及ぼさなくなっている。「ガンダム」がその若者の思想のすべてになっているのと同じように、J-popこそが音楽のすべてと割り切っている”というようなことが書いてある。つまり、世界を見渡せば、優れた音楽がたくさんあるのに、何となく今の自分の気持ちを大便、いや、代弁してくれているような気になる歌詞(あくまで歌詞ね)のJ-POPしか聞かない、、、。
まあ、それならそれでよい。私は学校の先生じゃないから、そんな子にまで、
優れた音楽や芸術や文学を紹介してゆく時間もエネルギーもない。
でも、せめてKENSOに興味を持ってくれた若者には、ぜひぜひ、本物に
触れてもらいたいと思うのだ。
以前友人が、
「これがいま支持を得ているゲーム音楽だよ。結構、プログレっぽいと
思うから、清水サンも聴いてみて」と、ゲーム音楽のCDRだったか
MD(もはや死んだメディア?)だったかをくれた。聴いてみた。
優れたロック、クラシック、民族音楽で育った私には、それは単なる商業音楽にしか聞こえなかった。商業音楽でないゲーム音楽などというものがあるのかどうかは別として。
「こんなものが支持されているのか?」と嘆息したことを
覚えている。もちろん優れたゲーム音楽もあるのかもしれないが
(G.Gのケリー・ミネアが作ったゲーム音楽なんてなかなか面白かったし)
少なくとも私が聴いた女性ボーカル入りの“日本製”は楽曲も演奏も歌唱も陳腐であった。
多感な思春期から素人騙しのゲーム音楽や三流アニメの音楽だけを聞いていては、
どんな素晴らしい音楽、天才がそれこそ身の危険を感じながら、あるいは
命を燃やしながら作った音楽でさえ、そうしたゲーム音楽やアニメの音楽のなかで培われてしまった貧弱なボキャブラリーでしか語れないし、その本質の片鱗を感じ取ることすらも難しいかもしれない。
ペヤングのカップ焼きそば(私はどちらかと言えば、日清UFO派だが)に
入っている乾燥野菜しか食べたことがない人が~つまり、あの乾燥野菜で
味覚受容器からニューロン&シナプスを経て大脳皮質・味覚中枢に至るネットワークが形成されてしまった人が~野菜本来の美味しさを大切にした、
例えば京都懐石料理を充分に味わうことができるのだろうか?
光田くんが、ファンクラブの会報で、「これは芸術なのか商業音楽なのか」
といったことを書いていたが、峻別力や洞察力は、
本物を自分の足で探し(当然、お金と時間がかかる)、徹底的にその対象に
対峙するところからしか生まれないのではないか。
先日のライブ終了後のバックステージで、私は四半世紀ぶりくらいに母校の歯科大軽音楽部の後輩の井上くんに再会した。彼は、実はKENSO 1stにコーラスで参加しているし、裏ジャケにも写っている。また「A boy in solitude」収録の「若き日の私へ」の原曲ではギターを弾いている。
彼のお父様は、彫刻家の故・井上武吉さん。
あの「箱根彫刻の森美術館」を作られた偉大な芸術家だ。
日本のみならず、海外の街角にもお父様の彫刻は屹立している。
(ぜひ、まずは図書館などで写真を見てみてほしい。そして現地へ赴き、
実物を見てほしい。プログレである!)
二年前くらいだったか、井上くんがお父様の作品(彫刻や建築)を紹介した
立派な写真集上下巻を送ってくれたのをきっかけに、度々連絡をとるようになった。
彼との会話が心地良いのは、彼が“芸術”について実によく分かっているからだと思う。
想像するに、偉大な芸術家の息子であったことはしんどいことでもあっただろうが、お父様を間近で見ていて“芸術ってこういうものなのだ”といういうことを
肌で感じたことで、彼の中にしっかりとした芸術観が形成されたのだろう。
「内ナル声二回帰セヨ」を含むKENSOの作品についても、「40TH記念本」の
私の文章についても、他の人に言われたことのない個性的な感想を述べてくれた。
私が20代の頃に作ったメロディを使った「若き日の私へ」や「新宿厚生年金に
空」については、例えばマグリットやデルボーの絵画の中に繰り返し現れるモチーフとの関連をキーワードに会話がはずんだ。
私は自分を芸術家だなんて、これっぽっちも思っていないが、
最近のKENSOの作品に対する批判的な意見を見聞きして、
「どうして、これがわからないのかなあ?」と残念に思うことは
少なからずある。
好き嫌いは、もちろんあってよい。
「KENSO SECOND」が最高、「夢の丘」が頂点、そう感じて勿論良い。
どちらも私達の作品だ。
でも、「どうして、これがわからないのかなあ?」という思いは
拭い切れない。
まあでも、もう既に感性が形成されてしまっている大人はしかたない。
しかし、これからの君には、ぜひ、本物に多く触れてほしいと思うのだ。
それは、君自身のためなのだから。
歯科医師年金をもらうのは60歳からにするか65歳からにするか、などといった
ことも考えている私の今のヘビーローテションは、
シューマンの某歌曲。
半田さんに「レパートリーのひとつでもある曲」だと伺い、聴いてみることにした。
ソプラノのLucia Poppとメゾ・ソプラノのAnne Sofie von Otterの
二人のバージョンを聴き比べながら、今まであまり触れてこなかった
声楽という世界の素晴らしさに感動している。
今日は、プーランク作曲の「グロリア」という曲の存在を教えていただき、
早速CDを注文した。
こうした私のモチベーションの根底にあるのは、言うまでも無く
「KENSOと半田美和子コラボレーション・第二幕」すなわち、
「待ってろよ!半田美和子(敬称略)!」という気持ちだ。
半田さんのパソコンには、「清水さんにお勧めする曲」というのが
リストアップされているらしい。
もう、嬉しい事言ってくれるわね、美和子さんたらア。
海外から「内ナル声二回帰セヨ」の感想が多く届いている今、
「KENSO AT LAST」へ向けて、私の心は既に離陸している。
追記・来年2月に開かれる半田さんが参加されるコンサート、
このリゲティ、きっと凄いことになりますよ。
半田さんのソロアルバムにも収録されていたあの現代曲を、
オーケストラと共演するのだ。
(もともとはオケ曲だったと伺ったような記憶がある)
あたしゃ、早速チケットを購入したわよ。
懐メロのロックコンサートを否定はしないが、クリエイターを目指す君、
自分の人生で何かを成し遂げたい君は、このコンサートに行くべきだ。
“本物”には、今すぐに分からなくても、自分が何かに真摯に継続的に取り組んでいれば、いつの日か必ず“分かった!”という瞬間が来ると思うし、その時に既に
“本物”は君の血となり肉となっているだろう。
■神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会 音楽堂シリーズ第3回
2015.02.14(土)15:00-
会場: 神奈川県立音楽堂
指揮: 川瀬賢太郎 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
半田美和子(ソプラノ) 門脇大樹(首席チェロ奏者)
リゲティ/ミステリー・オブ・マカブル
ハイドン/チェロ協奏曲第1番ハ長調Hob.VIIb:1
ハイドン/交響曲第60番ハ長調Hob.I:60「うかつ者」
http://www.kanaphil.or.jp/Concert/concert_detail.php?id=258
by kenso1974
| 2014-09-12 09:13